「今度は猫とかいいかもな。人間はメンドクサイ」



after world



ちゃんに似たヤツやったんやな。見れへんで残念やわー」
「そんな似てないですよー。でも何だかんだであっさり行ってくれて助かりました」

最後の最後までめんどくさそうだったけど、来世でその性格がどうなるのかちょっと気になる。
猫になったら表情とか言葉とかわかんないし、飼い主や猫好きの人は手懐けるのに燃えるかもしれない。

「似てないって言うならいつまでも寛いでるのやめたら」
「まだいいじゃないですかー。今回物凄くエネルギー消費したんですもん」
「いつも以上に何もしてないだろ」
「精神力を使ったんですー」
「似た者同士やったのに何で一緒にだらけなかったん?」
「あー……あっちが宇宙人過ぎてついていけなかったんですよ」

一緒にまったり出来たらどんなに良かったか。あ、でもそしたら鬼上司が黙ってないんだろうなー。
さっきから視線で攻撃してくる少年の顔は振り返って確認するまでもなく歪んでいるんだろう。
ほんの少ししか関わっていないけれど、横山さんとの時間はなんか色々濃かった。もう二度とあんな時間は過ごしたくない。

ちゃんにそこまで言わせるっちゅーことはほんま面白いヤツやったんやな。惜しいことしたわ」
「そういえば藤村さん最近いないこと多いですね」
「なんや寂しいん?」
「いいえ全く」

何やら騒ぎ出した金髪幽霊はスルーして何気なく斜め後ろを振り返れば、イライラと腕組みをした翼の姿。
翼ってなんであんなに怒りっぽいんだろう。カルシウム足りてないとか? 幽体は何も食べれないから今からどうにかするのは無理だ。きっと生前に牛乳とかニボシ食べなかったんだろう。背も低いし。
そんな失礼なことを考えていたのが気づかれたのか彼の可愛らしい顔が更に歪んだ。勿体ない。

「そんな顔してると戻らなくなっちゃいますよ」
「余計なお世話」
「戻らん方が男らしい顔なってええんちゃいまっか?」
「喧嘩なら買うけど」
「相変わらず冗談通じへんねんな自分」
「ダメですよー翼さん。たとえどんなヤツでも魂消すのは重罪だって言ってたじゃないですかー」
「ちょお待ちちゃん!その意味深な発言なん?」
「ボクなら理由くらいいくらでもでっち上げれるよ」
「姫さんもシカトすんなて!ちゅーか怖いわ!」

大袈裟に騒ぐ藤村さんを翼は煩わしそうに一瞥して鼻で笑う。
やっぱりこうでなくちゃ。これならあたしも思う存分ダルダル出来る。
金髪幽霊さんに付き合うのは疲れるだけなので意識的にシャットアウトし、代わりに下へと意識を向ける。 見覚えのある人影を見つけて思わず声が漏れた。


「おばさんちわー。アイツ元気っすか?」
「圭ちゃんいらっしゃい。元気って言うのかしら?のんびりしててあんまり動かないのよ」
「名は体を表すってほんとだったんすね。…っておい平馬、引っ掻くなって!」
「ほんと、圭ちゃんにじゃれてるのなんてあの子そっくり」

「…横山さんがじゃれてる姿なんて想像できないんだけどなー」
「身内にだけ見せる顔もあるんやろ」

ひょこっと肩越しに顔を覗かせた藤村さんにちょっとだけ驚いた。
どうやらあたしが下を見ていることに気づいて騒ぐのを止めたらしい。てか近いんだけど。

「猫に死んだヤツの名前付けるなんて理解できないね」
「気が紛れるんじゃないですか?横山さんも猫になりたいって言ってましたし、それに性格も似てるみたいですね」
「でも別に生まれ変わりでも何でもあらへんのやろ?」
「そうですねー。あの猫この前拾った野良猫みたいですし」
「この前て?」
「雨の日ですよー」

藤村さんが上へ連れて行った幽霊について聞きたがるのはいつものことなので説明するのも慣れた。
だけどやっぱりプライバシー云々の関係上細かく説明することはない。幽霊の特徴とかちょっとしたことを話すくらいだ。
勿論今回も詳しくは話していないし、あたしがうっかり倒れたことなんて教えるはずもない。

あんまり日は経っていないけれど薄れつつある記憶に欠伸を一つ。薄れているというか思い出さないようにしてるのが本音
大きく伸びをすれば鬼上司がこっちを見た気がする。そろそろ時間切れかな。


「コラ平馬!大人しくしろよな」

「あーあたしも猫になりたい」
「だったら早く仕事しろ」
「独り言につっこまないでくださいよー」


永遠の14歳。今日も今日とてダルダルしつつ天使とか悪魔とか死神的な役目を果たす為にそれなりに頑張ります。