実は大型犬ってあんまり好きじゃないんだけどなあ。



犬、飼い始めました。



「ねぇ柾輝、躾けって大事だよね」
「…またお前は突然わけのわからねぇことを」
「躾って、なんか飼ってたっけ?」
「違うの五助くん。これから仕方なく飼い始める感じ」
「は?何それ意味分かんない」
「別に翼くんに分かって欲しいわけじゃないよ」

翼くん得意のマシンガンが放たれる前に両耳を塞いで、そのまま素早く柾輝の影に隠れることに成功した。
キャンキャン吠えてるのが聞こえる気がするけどそれは五助くんとロクに任せて……ん?キャンキャン?
そういえば翼くんもなんか犬っぽいなー。小型犬。ポメラニアン的な!

「あんまり翼怒らせんなよ」
「だって勝手に怒るんだもん」
「柾輝コイツ殴って良い?」
「六助で我慢しとけ」
「俺かよ!」
「あのね、犬は餌で釣るのが一番だよっていう助言を受けたから、わたし早速やってみようと思うの」
「早速って…これでか?」
「うん。ほんとは自分で食べたいけど、ロクの金だから良いかなーって」
、本人に聞こえてるから」
「だいじょぶだいじょぶ問題ない。それより……、」
「あ、ちゃん見っけ!何してんのー?」

相変わらず柾輝たちとお喋りをしながらドリンクボトルを洗っていると、丁度良いタイミングで餌付け対象物と遭遇。
ぱたぱたと駆け寄ってくる藤代くんと柾輝に預けているアイスを見比べた後、意を決して口を開く。

「藤代くん、アイス食べたい?」
「え、くれんの?ちょー優しい!」
「じゃぁストップ」

片手を前に出して待ての合図をすると、藤代くんは急ブレーキをかけるようにわたしの数歩前でぴたりと止まった。
目の前には嬉しそうな笑顔を浮かべたまま動かない藤代くん。凄い、大成功かもしれない。

「これあげるから、大人しく部屋に戻って明日に備えて体を休めること」
「えー、俺もちゃんと喋りたい」
「じゃぁこれあげないよ?」
「…わかった。でも明日は相手してよ!」
「はいはい時間があったらねー」
「じゃぁちゃんお休み!黒川たちもまたなー!」
「……、もしかして犬ってアイツのこと?」

そうだよ。と頷くと、4人は何とも言えない表情でご機嫌なまま走っていった藤代くんを見つめた。



「たくちゃん、グッジョブ」
「あぁ、成功したんだ。良かったね」