なんて綺麗なんだろう。 確かにそう、思ったんだ Reine Dieu 「あれ?真田怖いのー?」 あたしの言葉に真田はいつも以上に目を吊り上げる。 元々吊り目がちな真田が怒ると迫力満点で……これはちょっと、怖いかもしれない。 「あ、うんごめんね。音に吃驚しただけだよね」 素直にそう謝ると、真田はフンっと顔を逸らしてしまった。 …なんだよ。ほんのちょっとからかっただけじゃないか! こんな時に思わずむっとしてしまうあたしは、友達に子供っぽいと言われてしまうのも仕方ないかもしれない。 ぴか、 「―…ねぇ真田」 「あ?」 「ちょっと、変なこと言っても良い?」 「…なんだよ」 「雨が降るとさ、神様が泣いてるんだって言ったりするでしょ?」 「…」 「そうやって考えた場合、雷の時って神様が怒ってるのかなぁ…」 ごろごろごろ 「あのさ、真田やっぱ怖いんじゃない?」 「な、違っ…!」 光と音が一緒にこないのは速度の関係があるから仕方ない。 遠ければ遠いほど、音は光に遅れてやってくるもの。 だから、真田がただ突然鳴り響く音に驚いてるだけだってのはちゃんとわかってる。 ――あ た し も 昔 は そ う だ っ た か ら 。 ぴか 「光った時に数かぞえると良いよ。心の準備出来るから」 ごろごろごろ 「ほら、もう怖くないでしょ?」 「……別に、怖かったわけじゃ、」 「あーうんそっか、ごめんごめん」 吊り目の所為で怖いと思われやすい真田だけど、こうやって拗ねたような表情を見ると吊り目さえも可愛く思えるから不思議だ。 あぁ困った。真田が可愛くてたまらない。 「――…、は」 「ん?」 「は、怖くねぇのかよ」 「……やっぱ怖かったの?」 「………。悪いか」 「ううん、全然」 「…」 「いや、うん。あの、ね?そんな疑り深い目で見なくても、別に誰かに言ったりしないよ」 あたしってそんなに信用ないのかなぁ? 真田にじっと見詰められたのがなんだかちょっと哀しくて、逃げるように俯いた。 「…」 「……あの、」 ピカ、 ガラガラガッシャン 「…ッ、!」 声にならない叫びが漏れる。 心の準備なんてしてる余裕もなかった。 「おい、大丈夫か?」 「…だ、大丈夫……うん、へい、き」 ばくばくと煩い心臓を両手で押さえつけながらコクリと頷く。 大丈夫だ。ちょっと吃驚しただけ。自分に言い聞かせながらゆっくりと息を吸う。 「心の準備出来るんじゃなかったっけ?」 「や、だって今の近かったし!てかさっきまで遠かったのに突然こんな早く音来るとか思わなかったもん…!」 真田の肩が震えてるのは怖がっているからじゃない。 何でわかるかって、そんなの、クツクツと押し殺したような笑い声が微かに聞こえるからに決まってる! 恨みがましいあたしの視線に気付くと、真田は器用にも片眉を上げて見せた。 ――コイツ、実は意地悪いぞ…! これぞ正に形勢逆転。なんだか無性に悔しくって、あたしは益々むっとする。 不機嫌なまま両手で頬杖をつくあたしに、ややあってから真田が静かに声をかけた。 おいこら、話しかけるなら前向いてないでこっち向きなさい。 言ってやろうと思った言葉は飲み込むしかなくなった。だって真田があまりにも似合わないことを言うから。 「雷って女だと思う」 「…へ?」 「だってほら、神様っていうより嫉妬深い女王って感じしねぇ?」 ちらりとあたしに視線を向けてまた直ぐ前を見る。 ぽかん、と真田に釘付けになっていたあたしは釣られるように前を向いた。 「……きれい。」 ただの窓ガラスが一瞬のうちに映画館のスクリーンに変わった。 それがとても綺麗に感じて、不貞腐れていたのも忘れて思わず微笑んでしまった。 視界の端で真田も小さく笑ったのが見えたから、まぁ良いとしよう。 「が誰かに言うとか最初から思ってねぇから」 ------------------------------------ 真田くんがさんを凝視したのは、さんが何の含みもなく悪くないと言ってくれたからです。 日常的な話ということだったので、雷が激しく鳴っていたときにふと思いついたものをぽちぽち打ち出してみました。 思い切り名前負けならぬタイトル負け、と言いますか… 素敵なサイト名でしたのに雰囲気出せずにすみませんでした。 でも個人的にはとっても楽しく書かせていただきました。 サイト名をお貸しくださった倉科さん、参加させてくださったふたばちゃん、本当にありがとうございます…! Reine Dieu * 神様女王(フランス語) Special Thanks * 倉科浬音さん,ふたばちゃん +++ 「Eve」のふたばちゃんが主催していた「exchange!」という企画に参加させていただいた時のお話です。 |