あぁどうしよう頭の中がぐちゃぐちゃだ。あたしはどうしていつもこうなんだろう。 何もしたくなくてどこにも行きたくなくて頭の中では色んな言葉が回ってるのに口にできなくて そうじゃないんだよ。わかってるんだよ。だけどどうしようもないんだよ。 こんな自分が嫌で消えちゃいたくてでも痛いの嫌だし怖いから思うだけで何もしなくて いっそ誰かが――してくれればとか思うけど実際そんなことになったらパニックで泣き喚くんだろうなぁ…。 頭の中には妙に冷静なあたしがいるのに。でもやっぱりそれを伝えられなくて。 きっと甘えてるんだ逃げてるんだ。わかってる。わかってる! 逃げ出したい逃げ出したい で も ドコ へ ? 「ちゃん」 頭の上から降ってきた声にはっとして顔を上げると、目が眩むような笑顔 ――将ちゃん、 きっと、風にかき消されてしまうほどの大きさだったと思う。 だけど音に乗せた名前からじわじわと温かさが広がって、駆け巡っていた黒いモノが一つに纏まり始める。 「どうかした?」 「……。あのね、あたし昨日お父さんとお母さんに酷いこと言ったの」 「うん」 「思ってること上手く伝えられなくてね、だからずっと黙って聞いてたんだけど、途中で爆発しちゃったの」 「うん」 「頑張れとか、なんか違うんだよ。そうゆうんじゃないの」 「うん」 「あたしは昔からこんなで2人が思ってるような子じゃなかったの。いつもやりたいことなんてなくて、だから人任せで」 「うん」 「……やりたいことがなくて何もしたくないのはいけないことなのかなあ、」 あたしだってわかってるんだよ?このままじゃいけないって。 このまま動かないでいて何かが見つかるなんて思わないし、何もせずに一日が終わるのは退屈だし寂しい。 でもね、わかってるのに動けないの。ほんとだよ。頭ではちゃんとわかってるの。だめだって、思ってるの。 自分で自分が嫌になる。嫌いだよ、大嫌い。昔からずっと、大嫌いだった。 なんでかなぁ、何でこんなんになっちゃったのかなあ。もっと、ちゃんと、ちゃんと…… 「大丈夫だよ」 いつの間にか同じ目線にいた将ちゃんがふわりと微笑んで、同じようにふわりとした感触が頭の上に触れた。 「大丈夫だよ、ちゃん。だから一緒に帰ろう?」 ――あぁ、どうしよう。泣きそうだ。泣く、 将ちゃんは不思議。まるであたしの安定剤みたいだ。 どうせならこのまま、頬を滑る冷たいものと一緒に頭の中の黒いモノも流れてしまえばいいのに。 そしてそのままあたしを構成する世界を覆ってしまえばいい、 「……うん。帰ろう」 もう少しだけ、このままでもいいだろうか。現状に甘えて何もしないという逃げ道に隠れて 陽だまりのような将ちゃんの傍にいてもいいかな。蹲ったままでも、いい? お父さんお母さんごめんなさい。本当はだめだってわかってるけどそれでもあたしは動きたくありません。 何もしたくなくてどこにも行きたくなくてそれでもここから逃げたくてだから――、 だからわたしは手を伸ばす 伸ばされた手を握ったら、少しだけ黒い塊が小さくなった気がした。 -------------------------------------------- 諸事情で風祭家というか功兄のマンションにお世話になってる女の子のお話。 |