若菜結人中学二年、夏

え、何?あーダメダメ。紹介なんてするわけねーだろ。
ばっかお前!俺はお前の為を思って言ってやってんだっつーの!
アイツは一馬の幼馴染なんだぜ?…アホか。一馬の幼馴染イコール俺と英士の幼馴染に決まってんだろ。
下手に手ぇ出してみろ、一馬の罵声と英士の冷やかな視線に殺されんぞマジで。
…は?俺は何もしねーのかって?
俺はアレだ。アイツが気づいて余計な心配しねぇよーにフォロー役的な?
ま、一番美味しいポジションだよな(笑)

〜中略〜

俺はアイツのことどう思ってるかって?
んなの好きに決まってんじゃん。
あー言っとくけどラブじゃなくてライクな。じゃねーとドロ沼だから(笑)
っと、やべ。喋りすぎた。今のカットなカット。うっせーこれ以上は口が裂けても言えねーっつの!
……ん?てか口が裂けたら何も言えねぇのって当然じゃね?どれくらいかにもよるけど痛さ半端ねぇだろ。
ま、とにかく自分が可愛けりゃ絶対アイツには手ぇ出すなよ。

「一馬と英士が気づく前に俺がお前を潰すから」

なーんちって!ガハハ、ビビった?(笑)
でもま、アレだ。お前のことも好きだけど、俺ん中で優先順位決まってっからさ!そこんとこお忘れなく。


砂の城


「ぶっちゃけアイツが誰とくっ付こうがどーでも良いんだけどな」
――ただ俺はアイツラといつまでも楽しく笑っていたいんだ。



若菜結人中学二年、冬

「一馬に彼女できっかも」

ほら、前にちょろっと話したじゃん?例の電車の女。
最初は一馬も戸惑ってたし割と放置してたんだけどよ、最近はなんか…こう、イイ感じみたいな?
ま、話聞く限りじゃサバサバしてて良い子っぽいし、一馬の好きなようにすれば良いとも思うんだけどさ。
つーかさっさと付き合っちまえくらい思ってる。ぶっちゃけちった(笑)
…ん、あぁ、アイツな。多分変わんねぇと思う。一馬に彼女が出来りゃショックだろうけど笑っておめでとうって言うんじゃね?
一馬も馬鹿だよなー。あーんなイイ女がずっと傍にいんのによ。
……まぁ、それが悪かったのかもしんねーけど。
一緒にいるのが当たり前すぎてわかんなくなることってあんだろ?
だから俺は良い機会だと思ってるわけ。過保護な一馬が変わればアイツもちょっとは違うものに目ぇ向けられるよーになるかもだし。
ま、問題は英士だな。アイツがどう動くかで俺の立ち位置も変化したりしなかったり…めんどくせ!
楽しそう?だって楽しーもん。ははっ、言ってろー。どーせ俺はジコチューだっての。
それにさ、大事にだいーじにするだけが優しさじゃねぇだろ。
何だっけ、アレだ。ライオンが子供を崖から突き落とす感じ?
どーしょもない幼馴染が変化するにはこれくらいデカイ衝撃がないとな!


砂の椅子、崩壊間近


「どーせなら全部真っ白にしちまえば良いんだよ」
――これくらいで壊れるような関係じゃないって信じてる。



若菜結人中学二年、春

馬鹿だよなー。もっと楽な生き方だってあんのに。
誰がって両方に決まってんだろ。アイツも英士もどっちも馬鹿。
ついでに言えば一馬はスッゲー馬鹿!
だってアイツ中途半端なんだぜ?彼女できたんならアイツのことほっといてやりゃ良いのに…まぁ無理だろうけど。
でもよ、それならそれでせめて空気くらい読めって話じゃね?
バレンタインのときなんてバカズマの所為でアイツ泣きそうだったし。
アイツが元気ないときとかすぐ気づくくせになーんで肝心なとこ鈍感なんだか。
…あ。でも一馬が鈍感なお陰で英士が動いたのか。
あの英士が俺たちの前でアイツに話し掛けたとか凄くね?スッゲェ進歩だろ!
んでもってこないだ勢い余って告ったっぽい。…や、どっちも何も言ってねぇけど微妙に空気違うし。
このまま放置でも良いんだけどさ、折角だからちょろっと世話焼いてくるわ。
…そ、今からアイツと待ち合わせなの。おデートのお誘いってやつー。俺ってばモテモテだかんな!(笑)

「全部知ってて黙ってた英士は良いけどアイツは違うから」

オトメゴコロは複雑って言うし?頭ん中ぐちゃぐちゃだろうから血管ブチギレる前にどーにかしてやんねーとさ。
ん?ま、俺にとっても大事な幼馴染だし、一馬ほどじゃねーけどやっぱアイツが可愛いんだわ。
それに俺はどっかの誰かサンみたいに「好きな子ほど苛めたい」タイプじゃねーしー…と、これ絶対内緒な!
……あ、そっか。お前ら知り合いじゃなかったっけ?そりゃ内緒も何もねーか(笑)
は、英士?アイツはほっといても平気。勢い余ったとはいえゲロってスッキリしてるっぽいし。
それに俺、可愛くない野郎より可愛い女の子のが好きだもーん。
つーことで、そろそろ行ってきまーっす。


砂の壁、覗き穴


「ヒントくらい与えても良いだろ」
――答えを出すのは俺じゃないけど。



若菜結人高校一年、梅雨

はいはいちゅうもーく!今日は一体何の日でしょーか?
…待て待て待て、なにその可哀想な子を見る目。俺別に可哀想じゃねーかんな?!
別に強がってねえし…英士たちんとこは学祭終わったばっかでアイツラも疲れてんだろーし?
……でもだからって俺の誕生日メールだけで済ますってどうよ!?酷くね…!?せめて電話しろ電話!
はいだからその視線止めー!…そーだよ悪いか、俺は根に持つタイプだよ!
ん?あぁ、ま、そーだな。アイツは多分今度会った時に何かくれると思うぜ。律義だし(笑)
つーかアレだ。こないだちょっと色々あって俺がフォローとかしてやったお礼に何か奢ってくれるっつってたわ。
…あ、バレた?そーそ、奢ってねって言いだしたのは結人くんでーっす。
丁度良いから今度の練習休みの日にでもアイツとどっか出掛けっかな。そんで後で英士に自慢するとか、最高じゃね?
ししっ、英士のヤツ羨ましがんだろーな。素直じゃないから言わねえだろうけど(笑)
そうと決まったら即メール!ついでにプレゼントのリクエストもしとくか。

〜メール作成中〜

うっし完了。んじゃ帰っか。…はいそこ、なに手ぇ振ってんの?お前も一緒に帰るんだよ。
てかゲーセン行こうぜゲーセン。今日の俺は王様だから文句は聞きませーん。
……だーかーらー!

「俺はお前にも祝って欲しいんだよ」

察しろよ馬鹿。これだから庶民は…って王様にかけたシャレだろ、怒んなって!


砂の王冠


「誕生日って大切なヤツラに祝ってもらってこそ、だろ?」
――その他大勢に派手に祭り上げられたとこで俺にどうしろっつーの?