「ねえ!あなたの心にあたしが入る隙間ある?ちょっとで良いよ。ほら、あたしチビだからさ」



まひるに三日月



「小舟、爪あと、チェシャネコの口、」
「なにそれ呪文?」
「違うよー」
「じゃあナゾナゾ?」
「んーん」

「三日月だろ?」

「!…うん、あたり」


些細なことでも拾い上げてくれる人であってほしい。



「あ、わかくんそこ地雷」
「ちょっおま、それ早く言えよ!」
「だってピンポイントで踏むとは思わなかったんだもん」



耳の奥で心臓が鳴ってる。



「大丈夫。あたし鈍感だもん。傷つかないよ」

―それは、傷ついたことに気づかないだけじゃなくて?

脳裏を過った言葉を口にすることはなく、わたしはただ口を噤んだ。
見慣れているはずの天真爛漫な笑顔がなんだか無性に儚く見えたから。



私は今も、君への答えを見つけ出せずにいます。



好きなものは全部、抱きしめていたいのね。
でも実際のとこそんなのは無理で。
好きなものはたくさんあるから全部をおんなじ力で抱きしめることなんてできないし
全部を全部抱きしめようと思ったって、下とか上とか真ん中とか、端っこの方とかからするすると零れ落ちちゃうでしょう?
…なんだろう。幸せはすぐ逃げていくとか、さ、なんか違うと思うんだ。
たぶん、幸せだって大事に大事に抱えてもらってる方が嬉しいと思うの。
動き回るなんて疲れるし、一生が鬼ごっこなんて嫌でしょ?
じゃあ落としちゃう方が悪いのかって言うと、それもなんか違うんだよね。
だってさっきも言ったけどほんとうは抱きしめていたいんだもん。
好きで落とすわけでも忘れるわけでも、置いてってるわけでもないの。
磁石みたいにぴたっとくっついていられればいいんだけどね。…あ、同じ極 同士だと離れちゃうけど。

「それで?何が言いたいの」
「うん。つまりね、わたしはあなたが大好きだってことです」

好きなものはたくさんあって全部を全部同じ力で抱きしめることもできないけれど、
もしも落としちゃったり忘れちゃったり離れなきゃいけないことがあったとしても、だからって嫌いになったわけじゃないの。

「それだけは覚えといてね。忘れちゃっても思い出せるような場所にしまっといてね」



いとしい が増えるとどうして かなしい になるんだろう。

「すき。好きだよ」

きっともう、恋じゃない。



苦しいならやめればいい。
やめられないから、くるしい



「今までいっぱい笑ったから、いっぱい泣いても いいかな?」



おとぎ話のその先を知りたい。
―なんで?
だって、私はやさしいかたちが欲しいわけじゃないもの。
まーるくまあるく、わたあめみたいに甘いお話は現実に存在しないってことくらいもう知ってるもの。
―嫌いになった?
ううん、そうじゃない。あまい話も好きよ?ただ、とおいなって、

「……、の話はいつも抽象的すぎてわからないよ」
「うん。言葉にするのって難しいなって、自分でも思う。伝えるのって難しいのね」