「海賊王に、俺はなる!」 「英士、結人がサッカーやめるってよ」 「!」 「そう。ライバルが減って良かったね」 「!!」 「…」 「……」 「馬鹿なこと言ってスイマセンでした(土下座)」 一番星じゃなきゃだめなの? 誰よりも早く光らないと、見つけてもらえないの? 「ねぇケースケ」 「んー」 「考えたんだけど」 「んー」 「何で私ケースケと付き合ってるのかなって」 「んー……、んん!?えっ、なに、別れ話なら聞かないから俺!」 「その予定は今のところないけど。てか、ネガティブ」 「だってが突然妙なこと言い出すからさー。でも良かった、ビビったし」 「けーちゃん真っ赤」 「笑うなよ」 「ごめんごめん。でも今わかった」 「何が?」 「私がケースケと付き合ってるのって、ケースケがケースケだからなんだよね」 「…?よくわかんねーけどサンキュ」 「けーちゃん耳まで真っ赤」 「うるせー」 「可愛いやつめ」 「お前がな」 大丈夫を繰り返し過ぎて舌を噛んだ。 あたしは一体なにがしたいんだ。 「ごめん。在り来りなことしか言えないから、在り来りなことを言うね」 ――痛いのも、傷ついたのも、身体じゃなくて心なんだよね。 「逃げるのは弱さじゃない。目を逸らし続けることも、一つの強さだと思う。……ま、自論だけど」 手首に絡みついた白が眩しかった。 身体の傷を隠すための布。身体の傷を癒すための布。――それじゃあ こころ は? ずたずたになった心に包帯を巻くことをしなかったのは、俺。 誰にも見えない。俺にも見えない。だから何もしなくていいと思ったんだ。放っておいた。 でもきっとそれじゃだめで、それじゃなにも変わらなくて、 「目に見える傷なら何度でもあたしが治す。だけど、見えない傷は自分でしか治せないよ」 ゆっくりと心に絡みついた白。 それは傷を隠すための布。そして、癒すための布。…ほら、答えがみえてきた。 「……、…俺、ずっと怖かったんだ」 やっと認められた。やっとスタートラインに戻って来れた。 手首の包帯をほどく頃には、心の布は今より小さくなっている筈だ。 「あ、飛行機雲!」 流れ星も、飛行機雲みたいに流れたしっぽが見えたらいいのにね。 「っていつになったら俺に纏わりつかなくなるの?」 「……ん?もしかして遠回しにウザいって言われてるのかなこれは」 「あ、良かった気づいてくれて。ストレートに言わないと駄目かと思った」 「あたし的にはもうちょっとオブラート的な何かでぐるぐるっと包んでほしかったです」 何度泣いたら気がすむの? きみはいつもそう言うけれど、だけどね、 彼を想って泣けるなら、それ以上のしあわせなんてありはしないと思うのです。 だからあたしは何度でも同じ言葉をきみに返すよ。 「いとしさが消えない限り、ずっと」 人は痛みを知って、優しさを知るんだよ。 「なんて言うか、今更どの面下げて会いに行けば良いのか…」 「あーうるせえ。どの面も何もお前にゃその面しかねぇだろーが」 「だから大人しくそのアホ面下げて会いに行け」 愛される人になりたい。―と、いったら 欲張りだね。―と、笑われた。 (これ以上の愛を求めるより、愛されている事実に気づく方が楽なのに。) |