あなたがくれる言葉はいつも、わたしをキラキラさせてくれました。



「もうやだもうやだもう止めるっ!結人を好きなのなんてもう止める!」
「そう言って止めたこと一度もないよね」
「今度こそほんとだもん!止めるっ!」
「…一応訊くけど今度は何があったの?」
「……チョコ、いっぱいもらってた。しかもそれを自慢してきた」
「いつものことじゃん」
「ううぅ、でも嫌なの。止めるの。あんな無神経な男もう知らない」
「そう。―だってさ若菜。聞こえたろ?諦めてさっさと帰りなよ」
「え、ッ!?い、いつから?てか何でっ!?」
「…。この部屋使って良いからさっさと何とかしなよね」
「待って置いてかないで!」
「とか言ってるけど連れてって良いの若菜?」
「……」
「睨むなよ。ほんと、いい加減の愚痴は聞き飽きたんだよね」
「ひどい…」
「こっちの台詞。―…若菜、言っとくけどこれが最後だよ。次があったら遠慮なく連れて行く」

から言わせたいのも妬かせたいのもわかるけど、ほんとに愛想尽かされたら意味ないだろ」

「……サンキュ」
「事後報告は必ずしてね」



水槽に水が溜まっていくみたいに、視界が歪む。
じわじわとかさを増す水は、下の方から徐々に徐々に膨らんでいった。
――そうか、これが涙なんだ。
揺らいだ水槽はあたしの瞳か、それとも心か。



「かみ、さまは……神様は、決して誰も見放したりしませんっ!」
「そうだね。でも、神様とやらは決して誰も救ってなんかくれないよ」

「だってそうだろう?―信じる者は救われるなら、どうして、世界はこんなにも歪んでいるんだろうね」

もしかしたらそれは、信じた対象が歪んでいるからかもしれないね。

「…っ、それでも神様は、かみ、さま…は、」
「まだ言うの?神様とやらも、ここまで盲目に信頼されていたらさぞ気分が良いだろうね」

まあ、盲目的に崇められている神様ってやつが、実はわたしだったりするんだけど…ね。
何も知らない愚か者どもの祈りを聞いてやるほど、わたしはお優しく出来ていないんだ。
だからどんなに祈っても、信じても、なにも救えやしないんだよ。
それに誰も見放さないってのだって、最初からとうに見放してるんだから、今更見放す相手がいないだけだし。

「神なんて、何もしてくれないただの傍観者だよ」



全てを手に入れる人間は、全てを捨てなければならない。



「あたしね、傍にいてくれる人じゃないと駄目なの」
「誠二のことは好きだけど、大好きだけど、……でも誠二は、いてほしい時にいてくれない」
「ごめんね、ごめん。ごめんなさい。弱虫でごめっ、ごめんねえ…」



「あたしじゃない誰かになりたい」
「…。…俺は、じゃなきゃ嫌だよ」



「っく、ぶははっ!やべえツボった。ひいぃ!…、のままじゃ笑いすぎて腹筋が崩壊するっ…!」
「うるせーよ。英士、結人がまたハマってる」
「…。ねえ結人、想像してみなよ。本当に腹筋が崩壊したらどうなると思う?笑うどころか凄まじいことになると思うんだけど」
「……」
「お、止まった。ナイス英士」
「次騒ぎだしたら腹筋が崩壊するまで放置しておこうか。一馬も見たいでしょ?」
「別室に隔離してなら。うるせーし」
「勿論そのつもり」
「……お前らほんとに親友か?」



「あたしはね、あたしのことを好きじゃない英士が好きなの」
「それって牽制?」

この場合の笑顔は肯定と取るべきだろう。
わかってる。―わかって、た。
に恋をしたところで一生報われないことくらい、解ってたのに。
無謀な想いを抱くつもりなんてなかった。あの頃の俺はに興味がなかったんだから当然だ。

なんて嫌いだよ」

告げたときが終わりなら、自分の手で最後を決めなければいけない。
他の誰にも委ねることができない。
わかっていてそうさせるが嫌いだ。気づいてるんだろ?俺がのこと、



「あ、すいません。ちょっとで良いんで容赦してあげてください」



「助けたいと思うこと自体がおこがましいんだと思う。思い上がってると思う」
「だけどね、それでも一緒にいたいの。いてほしいの」
「お願いだから…この世界を嫌いにならないで」

だって、キミと出逢えた場所だもの。



「青い鳥は自分の中にいるんだよ」
「じぶんの、なか?」
「そう。の中にいるんだから見えなくて当たり前。探す必要なんかないよ」
「そっか。…でも、それじゃあ青い鳥は空を飛べないね」
「え?」
「籠の鳥は飛べない。鳥籠のわたしが壊れるまで、ずっと」
「……青い鳥はね、自由にならない方が幸せなんだよ」
「どうして?」
「知らない方が良いことも沢山あるからね」
「…。……よく、わからない」
「わからなくていいよ。はそのままでいいんだ。青い鳥の幸せの為にも、鳥籠は壊れちゃだめだから」



書く ことは 生きる ことに似ている