「会長ー。今日は何の会議なんすか?」
「んん?……何の会議だっけ副会長ー」
「何の会議でもありません。ないって言ってるのに会長が勝手にメンバー集めたんでしょう」
「なーる。じゃ、議題がないことについての会議にしよっか」
「帰って良いっすか?」
「お疲れ様でした」
「ちょっ、待て待て待て待て。わかった、きみたちの気持ちはよーくわかった」
「…」
「……」
「よし、じゃあ幸せについて本気出して考え「お疲れ様でしたー」……ええぇ、ここまで我慢したなら最後まで言わせてよ」
「いやあ、最近学校が平和で良いよなー」
「平和じゃないのは会長の頭の中だけみたいですしね」
「えぇえ!平和だよ!あたしの頭の中はお花畑が一面に広がってる感じに平和だよ!」
「帰りに肉まんでも買ってくか?」
「買い食いは禁止されてます」
「ちょっとくらい良いじゃん」
「役員が違反するわけにはいかないでしょう。ただでさえ会長があんななのに」
「…」
「……」
「えええ、なんかここだけ氷河期なんだけど。視線でお花枯れたっていうか凍ったんだけど」



おなじ空を見てたのはほんとだけど、ちがう景色を映してたね。



「あのね、英士。たとえその言葉にどんな色がのせられていたとしても――あなたは わたしの救いだもの」

だから何を言われても平気。怖いものなんてないの。
そう言って淡く微笑んだの声を、俺はもう思い出せない。

あぁ、なんて残酷なんだろう。

これが運命だというのなら、あの時 衝動のままに歯車を壊してしまえば良かったんだ。
噛み合わなくなった歯車は回らない。時が刻まれることはない。
忘れられないから苦しい。忘れてしまうから、かなしい。
世界を回す「時」という名の歯車は、きっと動く度にどこまでも残酷な音を立てるんだろう。



「とけてしまいたいね」



「あたしはあの子に心をあげてほしい。偽物でもなんでもいいから、あの隙間を埋める物をあげてほしい」
「…、は埋めてあげないの?」
「あたしじゃ埋められないよ。あたしは同じだけど、違うから。だから代わりにはなれないし、なっちゃいけない」
「同じように好きなのに?」
「……うん。すきだから、だめなの」

あたしがあの子だったら良かったのにね。
音にならなかった言葉は、空白を描いただけで溶けた。



「舟を漕ごうと思うの」
「…なに、突然」
「考えが纏まらなくてうだうだしてる自分をどうにかしようと思って」
「だからって何で舟?」
「なんとなく!」
「…転覆したら元も子もないんだから、漕ぐならブランコにしときな」



だいすきをありがとう。
あなたがくれた言葉と心を抱きしめて、あたしは明日をいきてゆくよ。



「…星が流れたら、」
「え?」
「瞼の裏に星が流れたら、会いに行くね」

だからそれまでさよならだ。
腕の中をすり抜けて、いつものように顔を綻ばせる。
手を伸ばせば触れることができるのに、どうしてこんなにも遠く見えるんだろう。

「ばいばい、たくちゃん」

泣いてもいいけど、笑ってね。
最後にはちゃんと、あたしが大好きな顔で笑ってね。

この一瞬を切り離してほしい。切り取ってほしい。
止まることのない時の流れから逃れる術を教えてほしい。
二人の願いは同じ。そして、叶ってはいけないと思うのも、おなじ

「ばいばい」

最後に紡いだ声は、誰のものだったのか。



目を閉じて広がる世界はどんな色ですか?
耳を澄ませて聞こえる音はどんな色ですか?
あなたを染める色に、わたしは含まれていますか?



自分の足で立てない人を拒む世界なんて、こっちの方からお断りだ。