「あ、ひまわりが泣いてる」 「…え?」 「ほら、花が下向いて種が落ちてるでしょ。あれってなんか、泣いてるみたいじゃない?」 今わかるのは、遠回しな優しさに気づけるほど、わたしが大人ではなかったということだ。 「たくちゃん」 「たくちゃん、あのね。もうすぐ空が泣くよ」 あぁ、そうか。 きみは夢の中を生きる人だから、そんなにも儚いんだね。 「勝手に決めないでって思ってもね、だからってやりたいことなんて一つもないの」 誰かに委ねないと何もできない。 意見を求められたところで何も言えない、言うことが見つからない。 それなのに勝手に決めないでほしいと思うわたしは、なんて矛盾しているんだろう。 「人間なんて矛盾の塊だよ」 笑ってくれたあなたはどこへ? 「翼ちゃんっていい匂いがするね」 「変態染みたこと言わないでくれる」 「変態じゃないもん!翼ちゃんの馬鹿!」 「ふうん、誰に言ってんの?」 「ごめんなひゃいー」 「ったく。これ以上騒ぐなら追い出すから」 「大人しくしてるからもうちょっとこのままでいてください」 「好きかって訊かれたらすぐ答えられるんだけど、愛してるかって言われたらわかんないや」 人に言えるような努力は、努力とは言えない。 そんな言葉をどこかで聞いた。…あぁ、見たのかもしれない。 でもあたしは、人に言えるような努力があってもいいと思う。 頑張ったんだよって、褒めて貰いたいって思ってもいいじゃないか。 そしたらまた、次も頑張ろうって、笑えるでしょう? こんなことを言うと、彼は困ったように笑うのだろうか。 あぁでもきっと、誰よりも努力をしている彼のことだから、そうだねってやさしく微笑んでくれるはず。 世の中にはね、「知らなかった」じゃ済まされないことが沢山あるの。 「なめんな、こんくらいどうってことねぇよ」 あたしの好きな人は強い。いつだって逆境を駆け抜けていく。 「正直者だねぇ」 「馬鹿が抜けてる」 「ははっ、馬鹿正直ってか?」 哀しいときに泣けるのは幸せなことです。 助けてと声を出せるのは幸せなことです。 「知らないくせに」 「は?」 「あたしが、どんな気持ちで…あの日 会いに行ったか知らないくせに」 わたしが生きる世界はここではない。 気づいた瞬間に、世界が割れた。 「かなしいの?」 「悲しいよ。が、泣かないから」 ちいさなちいさなひびは、とっくのむかしにできていた。 言葉以外で、繋がれたらいいのに 好きなのに。すきなのにすきなのにすきなのに、 どうしてこれは 恋 じゃないんだろう。 どうして、あなたの気持ちとイコールになることができないんだろう。 あなたを繋ぎ止める為に嘘をつくわたしを、許してなんか言わないから。 だからどうか、騙されてください。 だいすきです。ほんとうなんです。 わたしを好きだと紡ぐその唇も、やわらかく細められるその瞳も、すべて。 あなたを失いたくない。隣にいたい。 「だいすきだよ」 きっとこれは、世界で一番 残酷な嘘。 |