「あいつの時間はあの時で止まったままなんだな」 「のすべては風祭だったから」 「…あいつの怪我、そんなに悪いのか?」 「……」 「お前がそんな顔すんなよ。あいつらが笑ってんだから、俺らもそうするしかねぇだろ」 「風祭の怪我が治ればだって元に戻るさ」 「早く帰ってくればいいな。―2人とも」 「…あぁ、そうだな」 「なぁ、いつまで逃げんの?」 「さぁ。飽きるまでじゃない?」 「それいつだよ」 「悔しかったら捕まえて御覧なさあい。うふふってか?」 「キモ」 「みーとぅー!」 「…じゃあ、どこまで逃げんの?」 ――ドコマデモ。 なんでなんでなんでなんで ありがとうもごめんなさいも、まだ全然言い足りないのに、もっと伝えたいのに、 どこ行っちゃったの?なんで何も言ってくれなかったの? さいごまで、あたしのこと頼ってくれないんだね。 「勝手に死んだらぶっ殺すから」 「まてまて、ものすごい矛盾してるんですけど」 「いいから死なないって言いなよ」 「素直に死なないでって言ってよ」 そしたらあたし、殺されても死なないよ。 「だって矛盾してる」 些細なことで泣きそうになるから夏は嫌いなんだ。 泣きすぎて、もうそれこそ瞼が溶けるんじゃないかってくらい泣いて、ないて、 だから尚更、泣き止んだときにどうしたらいいのかわからなくて途方に暮れた。 ――ねぇ、あたしはあのときどうすればよかったのかな? 将ちゃん。あなたはいま、なにを想っていますか? 溢れかえる人混みの中であなたのそばにいられればよかった。 この世界の広さと狭さに泣きたくなるのは、きっとわたしだけじゃない筈だ。 「悪いけど、そんなんじゃなびかないよ」 射抜くような鋭い眼。けれど、その色はどこまでも哀しげで――、 抱きしめたかったのは多分、あなたじゃなくてあたし自身 「笠井くんは、残酷だ」 「うん、そうだね」 「冷たいのに優しい。今だって、突き放せばいいのに」 「突き放さないのは俺が優しくないからだよ。利用してるんだ、さんを」 「――…知ってる」 「うん。さんは優しいね」 「優しくないよ」 だって、あたしが本当に優しかったら あなたとあのひとを重ねたりなんか、しない。 「たとえ何が起こっても、あたしは味方だよ」――だからねぇ、信じて? 声に出さずに想いを託す。汲み取ってもらえるかどうかなんて知らない。 それでもただ、真実だけを伝えたかった。 この選択を後悔しない 「泣けばいいのか笑えばいいのかわからないから、取敢えず泣いてみたんだけど」 「間違ってはないんじゃない?」 「…そう、それならいいの。早く夜が明ければいいのに」 そうすればきみに会える。 |