とどのつまりわたしはこの底意地の悪い男が好きだと言うわけで、
神様そんなまさかあんまりですだってこいつ本気で性格悪いし
どうか気のせいだと言って下さい神様ほんとマジで!

「ちょっとそこ、宇宙と交信するのやめてくれる」

ほらやっぱり性格悪い!



ちゃんのこと好きだったよ」

……何それ、今になってそんなのずるい。
だって過去形なのに。今更伝えられてどうしたら良いの?
――こんなに好きなのに、どうしたらいいの?

「誠二くんは、ずるいね」
「うん、ごめんね」

ほら、そうやって笑えばあたしが何も言えないの知ってるんだ。

「……やっぱり、ずるい」



眠る前に、今日一日で吐いた嘘の数をかぞえてみた
だけど――苦しくなったから、すぐに止めた。



若菜結人という男は、8割方ジャイアンの成分で出来てると思う。

ー宿題見せて」

いつも通り遅刻ぎりぎりで教室に滑り込んだ隣の席の若菜は
いつも通り「おはよう」の挨拶よりも先に当たり前のように片手を差し出す。

「いつも言ってると思うんだけど、なんであたしが苦労して解いた答えを易々と写されなきゃいけないの?」
「良いだろ別に減るもんじゃねーし」
「減る。あたしの努力が」
「なんだそれ。良いから見せろって」

良いから良いからー、なんて。ちっとも気にする素振りを見せないこの男が憎い。
だけど結局、今日もいつも通り流されるままに努力の結晶が詰まったノートはあっさりとコイツの手の中に渡ってしまうのだ。

「…あ、そだ。お前この間の訳間違ってたぞ」
「英語の?」
「おう。当てられて俺が恥かいたらどうしてくれんだ」
「どうもこうも…てか、自分でやれ」
「嫌」
「うわームカツク。何様だお前は」
「そんなん結人様に決まってんだろ!」



行かないで、いかないで、
ずっと一緒だったのに、いつの間にかどんどん先に行っちゃって
走っても走っても追いつかないの。振り返ってくれる笑顔は変わらず優しいのに。立ち止まってくれるのに。
それなのにあたしは、いつまでたっても隣に並ぶことができない。
ねぇ将ちゃん。風を捕まえるなんてやっぱり無理なのかな、
ずっと一緒だったのに、一緒にいられると思っていたのに。
あたしが行かないでって言ったら、隣にいてくれた?一緒にいたいって言ったら、連れて行ってくれた?
もう、どれも今更過ぎて答えなんて出ないね。わかってるのに。



「空気読まなくてすいません、だって。丁寧な子だったね」
「ちょっとまて、よく考えてみろよ。空気読めなくてじゃなくて、読まなくて、だぜ!ぜってぇわざとだって!」



「天城、天城、」
「…るせぇ、またお前か」
「そう、わたし。それ以上はやめといた方がいいよ。痛いよ」
「痛みなんて今更だろ」
「違うよ。その人じゃなくて、天城が痛いんだよ」
「……」
「もうやめよう。これ以上、傷つくのやめよう」



今ならわかる。あの嘘は、わたしを守るためについた 世界で一番やさしい嘘だと
気づかなくてごめんなさい。傷つけてごめんなさい。
自分勝手な正義を振りかざして泣きわめいていたあの頃とは違う



「――ねぇ、好きなら何しても良いって考えどう思う?」
「愚問だね。そういう傲慢な考えの奴らがいるからストーカー被害が減らないんだろ」
「…じゃぁこの体勢はどういうこと?」
「同意の上なら問題ない」
「同意した覚えはないんだけど、」
「それこそ愚問だね。俺の誕生日なんだから、の意見なんてどうでも良いんだよ」
「わお、なんて傲慢」
「ストーカーじゃないだけマシだろ」
「そうだね。でもあたし翼の彼女になった覚えないんだけど」
「もう良いから黙ってろ」



ぼくはここにいます。
きみはどこにいますか?