西園寺さんの代理だと名乗ったその人は、「急で申し訳ないが、三日後の都選抜合宿に手伝いとして参加してくれないか」。と、電話口に涼しげな声を奏でた。
合宿参加者は都選抜メンバーから更に選抜した十名程で、私の他に飛葉中学校から女の子が一人手伝いで参加すること、 都選抜メンバーではないが、私と同じ桜上水中学校から佐藤成樹がゲストとして参加することなど簡単な説明が続く。
韓国から帰って来た風祭たちから今月末に合宿があることは聞いていたし、 合宿中の空き時間に憧れの西園寺さんから指導してもらえるかもしれないという下心もあったのでお母さんたちに了承を得て合宿参加を決めた。



都選抜からバスが出ると言うので集合場所に桜上水メンバーで向かうと、私たちに気付いた西園寺さんは 一瞬動揺したように見えたけれど、代理の人から頼まれたことを含めて挨拶をすれば、 「来てくれてありがとう。よろしくね」。と、うっとりするような微笑みをくれたのだ。



――なんて美しい、死神なんだろう。



「小島さんと佐藤くんは運が悪かったと思ってね?」


古びた木造の教室で目が覚めた私たちに彼女は「今から殺し合いをしてもらいます」と、 あのうっとりするような微笑を浮かべ、何故私たちが選ばれたのかという説明の合間に 私と佐藤に向けて少しの悪びれもなく告げた姿に、私は場違いにも数時間前と同じように美しいと思ってしまったのだ。









名前を呼ばれてスタート地点である教室を出てからずっと女子更衣室にいた私の耳が 少し音の外れたチャイムを拾うのはこれで二度目だ。 放送は一日に四回。午前と午後の零時と六時に流れると説明されたので、今は深夜零時だろう。 真冬の夜は酷く冷たい。


「これで二度目の放送ね。スタートが昼の零時だったから始まって十二時間経つんだけれど、一向に動きがないわねぇ…。 今回は校舎内のみだからハンデとして禁止エリアはなしにしたけれど、このまま何の動きもなく二十四時間の タイムリミットになったらあなたたちに期待している皆様も残念がるでしょうし……そうだ、 次の放送までに死亡者が出なければ禁止エリアを設定しましょう。これで皆やる気を出してくれるかしら。 それじゃあ、頑張ってね?」


震えたのは寒さの所為だけではない。
二十四時間経っても死亡者が出ない場合、全員の首輪が爆発するというのは勿論覚えていたけれど…。

手のひらに吸い付いた拳銃をじっと見つめ、頷く。かくれんぼはもう止めだ。