「前回の放送を聞いてもっと皆やる気を出してくれると思っていたのに、未だに死亡者は出ていません。 …仕方がないわね、禁止エリアを設定しましょう。どこにしようかしら……あ、ちょっと待ってね。 ―皆、朗報よ。たった今、小島有希さんが死亡しました。まさかゲストで呼んだ彼女が一番だなんて、 期待も大きかった分残念ね。だけど漸くやる気を出してくれた子がいるみたいで嬉しいわ。 ギリギリだったけれど禁止エリアはなしのままにします。それじゃあまた六時間後に。頑張ってね」



――なんで、こうなったんだっけ。









「選抜で合宿あるんやて?」


部室で汗を拭きながら着替えていると、突然直樹の声が響いた。
誰かがこいつに話したんだろうか。浮かんだ疑問に同じ都選抜メンバーである二人に視線をやれば、 柾輝は知らないとばかりに肩を竦め、翼は眉間に皺を寄せ口を開く。


「なんでお前が知ってんだよ」
「細かいことはええやん。うちからは全員お呼びが掛かったんやろ?さっすが俺のチームメイトや!」
「ドヤ顔すんな」
「あんた関係ねえだろ」
「ゴルラァ柾輝っ!お前は相変わらず先輩への礼儀っちゅーんがなっとらんな!」
「直樹煩い。で、六助。お前は何でそんな顔してんのさ」
「え?いや、…翼と柾輝はわかるけどよ、なんで俺が選ばれたんだろって、ちょっと」


もごもごと言葉を濁し、情けなくも俯いてしまう俺に突き刺さる―「知らねえよ」。
ぐっと唇を噛むと軽く膝裏を蹴られた。あっぶね!もうちょいでロッカーに突っ込むとこだっただろ! キッと恨みがましい視線を送っても我らがキャプテンは涼しい顔でボタンを留め、こっちを向くことなく声だけを投げる。


「でも、玲はサッカーに私情を挟まないぜ」
「翼…」
「ったくお前は。監督が身内贔屓するタイプだったら俺だって選抜受かってたっつーのばーか」

「選ばれたんだから胸張って行って来い」


バシッと叩かれた背中が痺れる。兄貴の言う通りだ。選ばれなかったやつらの分まで、俺はやれることをやるんだ。









「し、んだ……?」



――なんで、こうなった?

だって俺は、俺たちは、都選抜の合宿に来ただけなのに。
合宿前の不安なんて、が他のやつらと揉めたらどうすっかとか、どんな地獄メニューが組まれてるかとか、そんな、……殺し合いなんて、


「死亡者?…、んで。だって何もすんなって翼がっ、全員で協力するって…!」


ガクガクと膝が震える。さっき、放送の途中で聞こえた音は銃声だったんだろうか。 近かったように思う。それなら、ここも危ないかもしれない。人殺しが近くにいる。


「い、やだ…嫌だ。う、あ、うわあああっ!!」


振り払いたかったのは、切り裂きたかったのは、なんだろう。――この恐怖はいつ終わる?