「なんていうか、面倒くさいですね結人くん」
「そんなにはっきり言われると傷付くんですがさん」
「現実って時に残酷ですよねわかりますでも目を逸らしてはいけないと思うのですよ」
さんが実は俺のこと嫌いかもしれないっていう現実からは目を逸らしても良いですか」
「結人くんは強い子だって信じてます」
「そろそろ意外に打たれ弱い子だという事実を受け入れてくれても良いと思うんですが」
「そんなことよりこの口調飽きたから止めてい?」
「そんなことってひでーなおい。つかもう止めてんじゃん聞く意味なくね?」
「もっと言うなら結人の愚痴に付き合わされてる現状にも飽きたよね大分前から飽きてるよね」
「お前ってほんと正直だよないっそ感動するわまじで」


ずずず、と盛大に音を立ててシェイクを吸い上げる一見無表情の女を頬杖を付いて見上げる。
見た目は悪くないのになんでこう残念なんだ…っておい待て今口に放り込んだポテトチャンたちってもしかしなくても俺のじゃね攫いやがったな俺のトレーから…!
遠慮なんて欠片も見せずごっそりと奪い取られたポテトは既にの腹の中。
恨みがましい視線をぶっ刺したところでこいつは飄々と受け流すんだから、すぐに行き場がなくなる可哀想な俺の怒り。


「セット奢ってやっただろどんだけ食うんだよ」
「満たされるまで」
「俺だって満たされてえよ成長止まったと違って俺はまだまだ育ち盛りなんだよ」
「結人なんて横に育ってしまえば良い」
「さらっと呪いの言葉吐くの止めてください」
「ねえ、ナゲット食べたい」
「…お前ってほんっと自由人だよな良いぜ買ってやるよちょい待ってろ」


好きなだけ奢ってやるから話を聞いてくれと言ったのは俺だ。クーポンあったっけなと財布と携帯を持って階段を下りる。
てかナゲットだけで足りんのか?もっかい下りる羽目になんのもヤだし…お、サンデーのクーポンめっけ。これも買ってやるか。
昔から世話を焼かれる側の俺がまさか世話を焼く側になるとは驚きだぜ。
人を振り回すことはしても振り回されるのは全力回避!な俺が、といればこのザマだ。
でも実はそんな自分が嫌いじゃない。男女間の友情なんて鼻で笑ってたのが嘘みてえに、の隣はしっくりくる。
多分これが気の置けない仲ってやつだ。



きみにあげるのはとうしんだいの ぼく



「いつの間にそんなもん買ったんだよ」


トレーを手に戻ってきた俺に御座なりな言葉だけを投げてせっせと口にアイスを詰め込む姿に口許が引き攣ったのは、 うん。なんていうか……俺悪くなくね?寧ろ当然の反応じゃね?


「あそこの集団がくれた」
「なんで」
「さあ?いらなかったんじゃない」


スプーンの先を一瞬だけ斜め後ろに向けて告げる様はその集団とやらへの興味のなさをありありと示している。
それは俺としてもなんつーか、まあ嬉しい…ん、安心?なんだけど、せめて顔上げろ。あっちは良いけどこっちは見ろ。俺はアイス以下か。


「知らない人からもらった物は口にしちゃいけません」
「じゃあ捨てろと?フルーリーに罪はないよオレオ愛してる」
「じゃあサンデーは?」


ぱっと顔を上げて破顔するんだから、アイスに負けても良いかと思っちまうどうしょもねえ俺。


「恋に落ちたのでいただきます」
「両方食ったら腹下すぞ」
「本望だよね」
「さいですか」


どんだけ好きなんだよ。大方これくれたやつらもが空のシェイクをいつまでも啜ってたとかで哀れに見えたんだろ絶対そうだてかそれ以外の理由は即却下!
ちらちらとに視線をぶつけてくる集団から隠すようにわざとさっきとは反対側に座る。へっザマーミロ見えねえだろ。
水面下で火花を散らした俺たちになんか目もくれずに見事な食べっぷりを披露する自由人代表。
頼むからそうほいほい餌付けされんなよなー。


「結人はさあ」
「ん?」
「相談する相手がまず間違ってると思うんだよね」
「あー…お前考える気ゼロだもんな」
「めんどいの無理。それにどーせ答えなんて求めてないじゃん」


事も無げにあっさりと言い放つは俺の顔なんて一切見ずにスプーンでアイスを掬う。


「そもそも結人の性格が悪いことなんて今更過ぎてなんの面白味もないし」


ほんっと、簡単に言ってくれちゃって。
俺が俺でいる為にどんだけ神経張り巡らせてると思ってんだよ。いつだって空気読みまくりだぜ?

愛想がなくて我儘で食い意地張ってて自由なは決して俺を甘やかしてくれないし理解しようともしない。
余計なことはしょっちゅう言うけど余計な気を遣うことはない。良くも悪くも無関心なんだ。

それが俺には酷く心地良くて、時々、ほんっとに時々、ぼわっと目の奥が熱くなる。


「今度呼び出すときはもっと面白いネタ持ってきてよ」
「こんだけ奢らせといて何様だし」
「え?だって…結人くん貢ぐのが趣味なんでしょう?」
「馬鹿言ってんな貢がれてえよ」
「わー女の敵ー」
「棒読みか」
「ごめん飽きた」
のテンションって長続きしないよな」
「一瞬のノリって大事だと思うのだよ」
「今度は誰だ」
「ブッチー」
「誰」
「小学校のときの担任」
「知るか」
「知ってたらびっくりだよねストーカー?引くわ」
「よしわかった一回黙れ」



やさしい悪口



何度俺が救われたかなんて一生知らなくて良い。






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中身のない会話をさせるのが楽しくて楽しくて…ごめんなさい(笑)
この二人がなにをキッカケに出会って今に至るのかちょっとわかんないです。
でも結人くんにとってこの空間は親友たちとはまた違った、深呼吸ができる場所なのかなあ。
一緒にいると嵐のように喋るかずっと無言かのどちらかだと思う。傍から見ると謎過ぎる関係。