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プレゼントっていうか、ただのお礼だけどね。 幼馴染 22日が終業式だったら良かったのに。そう思うのはあたしだけじゃない筈。 学校側にも都合があるんだろうけど、生徒側としては祝日の次の日に終業式というのは好ましくないのだ。 (だって長期休みは一日でも多い方が嬉しい)(冬休みは十日くらいしかないから尚更) …それにしても眠いなー。校長を始めとした各担当教師の話を聞きながら何度欠伸をしたことか。 終業式と学年別指導を終えて漸く教室に戻って来たのは良いけれど、席に着いた途端本格的な睡魔が襲ってきた。 「優花ちゃん大丈夫?昨日ちゃんと寝た?」 首を傾げる友達に苦く笑う。 一馬と結人のところも今日が終業式だったから深夜まで騒いでることはなかったけど、 家に帰ってからお菓子作りを始めたあたしが眠りに就いたのは日付が変わってからだった。 ――と言っても作ったのは簡単な絞り出しクッキーだったから、寝るのが遅くなったのはその所為じゃない。 本当の理由は、眠ろうと思って目を閉じたら色んなものが頭の中を駆け巡ったから。 無視すれば良いのに延々と考えていた結果、いつ寝たのかもわからずに朝になっていたのだ。 要するに自業自得。口にすれば心配してくれるのはわかっているので理由は告げずに誤魔化そう。 まずまずな成績にほっと息をついて、さてこれからどうしようと首を捻る。 鞄の中でかさりと控え目な主張をした袋の中身は昨日焼き上げたばかりのクッキー。 指先でそれに触れながらちらりと教室内を見渡す。 成績表を受け取った順に帰って良いと言われたのにも関わらずあまり人数は減っていない。 それどころか、若干増えたかもしれない。…知らない顔が。 「うわあ、人気者って大変だねー」 呆れと感心が入り混じったような友達の言葉に頷いてしまうのも仕方ないと思う。 知らない顔―つまり先輩や他のクラスの人たちは一つの机を囲むようにして立っている。 その中心は勿論英士だ。聞こえてくる声によれば、冬休みの予定だったり連絡先だったりを知りたいらしい。 「うちら部活あるからお昼買いに行くけど、優花は?」 「帰るなら下まで一緒に行く?」という誘いをやんわりと断って教室を出て行く友達を見送る。 ――それから、さてどうしようと首を捻ること再び。 さっさとクッキーを渡して家に帰りたいけど、英士と無関係を装っているあたしがこの場で英士にこれを渡すわけにはいかない。 これなら学校来る前に渡しちゃえば良かったな。 英士と結人は最初から昨日真田家に泊まる予定で、そしてそのまま学校に行くと言ってたのだ。 四人でいるところを学校の人に見られたくなかったからあたしは敢えて時間をずらしたんだけど…(三人は途中まで一緒に登校した筈) 学校で渡すなんて無謀だったか。…うん。ここは大人しく諦めて、後でメールして英士が家にいるときに届けに行こう。 よし決めたと席を立った瞬間、未だ囲まれている英士とばっちりと目が合った。 帰るに帰れなくてイライラしていたのかほんの少し不機嫌そうにしていた英士の顔が僅かに変わる。 …うわあ、嫌な予感。 口許を引き攣らせてしまうのは、もうほんと仕方ないと思うの。 「小羽さん」 その一言と向けられた視線に、英士を囲んでいた人たちが追うようにしてこっちを見た。 彼女たちの意識が逸れた隙にその場から抜け出した英士は、そのまま真っ直ぐ近づいて来る。 そんな中あたしは気を抜くと強張る顔を何とか自然な形に保つことに集中して英士の後ろは見ないふり。 「この後委員会で仕事頼まれてたでしょ。小羽さんもう帰れるみたいだし、行こうか」 「……。うん、」 「―そういうことなんで」 最後にくるりと振り返って告げれば終わり。 彼女たちが何かを言う前にさっさと出て行く英士に、あたしも少し遅れて教室から抜け出した。 「……いつ仕事なんて頼まれたっけ?」 「あんなの嘘に決まってるでしょ。いい加減帰りたかっただけ」 「……。あ、そうだ。これ、昨日のお礼」 あの場を抜け出す為に利用されたのはわかってた。 やっぱりなと思いながら周りを確認して、丁度人がいなくなったタイミングを逃さずにクッキーを差し出す。 すると何故か、英士はぴたりと足を止めた。…や、あの、人がいないうちにさっさと受け取って欲しいんだけど。 「どうしたの?」 「…ほんとにくれるとは思ってなかった」 「え、冗談だったの?……じゃあ、えと…、」 これは本来お礼のつもりなんだし、冗談だったなら無理に渡すつもりはない。 どうしようかと引っ込めそうになった手は、その手からするりと重みが抜けたことによって停止する。 「優花からのクリスマスプレゼントなんだし貰っとくよ」 「…ただのお礼だよ」 「あぁ、貰ったからには俺も何かあげた方が良い?」 「だから、お礼だってば」 後日、英士からクリスマスプレゼントが届いたとか届かないとか。 (これじゃお礼の意味ないじゃん!)(人の話くらいちゃんと聞いてよ) |