考え出すと止まらなくて、どうしてか急に泣きたくなった。



幼馴染




なんであたし、こんな目に遭ってるんだろう。
いや、別に何かされたわけじゃないけど(でも溜息吐かれた!)(ちょっとムカツク)
英士があたしから視線を外したことで金縛りのような状態は脱せられたんだから、逃げるなら今がチャンスだ。
チャンス、なんだけど……。

なんとなく、英士が口を開く気がして、動くに動けない。

理由もなく嫌われてるのって何か悲しいし、悪いところがあるなら直したい。
元々あたしは好きだったんだよ。友達だって、思ってたんだよ。
それなのに突然、友達だと思ってたのはあたしだけだって気づかされたんだ。
それが悔しくてあたしも嫌いだって言い聞かせたけど、やっぱり嫌いになりきれない。
だって英士は一馬の親友だ。やっぱり、好きな人の大切な人を好きになりたいし、好きになってほしい。


「……。ねぇ、なんであたしのこと嫌いなの?」


声が震えないようにぎゅっと掌を丸めたのはせめてもの抵抗だ。
質問を変えたあたしに英士が一瞬目を瞠ったように見えたけど、もしかしたら気のせいかもしれない。
妙な緊張に包まれて、暑くもないのにじわりと汗が滲む。
英士の目を見ることは出来なかった。こわい、と頭の中で警報が鳴る。

「…は、それを知ってどうするの?」

さっきと同じだけど、少しだけニュアンスが違う。
気づかれないようにそっと視線を向けると、黒い瞳は静かに足元を見つめていた。

「あたしに非があるなら出来る限り直すように努力する。理由もわからずに嫌われてるなんて嫌だし」
「……」
「昔みたいに、友達に戻りたい」
「…そう。――でも、それは無理だよ」

いつの間にか交わっていた視線の先で英士はあの日と同じように綺麗な顔で笑う。
相変わらず悪びれた様子なんてなくて、瞳の中に映るあたしは泣きそうな顔をしていた。

「―……な、んで?」
「俺は最初からを友達だなんて思ってなかった。だから戻るなんてあり得ないんだ」

ゆっくりと諭すような口調で発せられた言葉はじわじわとあたしの身体を侵食していく。
それが漸く脳へと到達する頃には、握り締めていた掌からだらりと力が抜けていた。

まさか本当に昔から嫌われてたなんて…一馬に紹介された瞬間さえも、友達になろうなんて思ってもらえなかったの?
頭を鈍器で殴られたみたいだというのは、正にこの瞬間のことだろう。
くらくらと眩暈を覚える頭を片手で抑え付けて、「そっか、」と呟くことが精一杯
それ以上は何も言えずに、黙り込んでいる英士を視界に入れることなく背を向ける。


なんだ、友達だって思ってたのは、今も昔もあたしだけだったんだ。
馬鹿らしくてやってられない。
戻りたい。なんて、自意識過剰も良いところだ。戻る場所なんて最初からなかったのに、

コンビニを出て暫くしたら走っても良いよ。そう言い聞かせながら足を前に出し続けた。
(聞かなければ良かった)(…嘘。聞いて良かった)