そういえば、どうして英士はあたしのことが嫌いなんだろう…? 幼馴染 一馬に彼女が出来た次の日、一馬の部屋で四人で遊んだ。 …ううん、遊んだっていうか、いつものように互いの学校の話とか、そんな些細な会話。 いつもなら結局はサッカーの話になってるんだけど、あの日は結人が何度も一馬に彼女さんの話題を振っていた。 赤くなる一馬を見て結人が笑って、英士はしらんぷりで、あたしはそんな三人をぼんやり眺める。 いつも通り。いつも通りだ。 だけど、実は妙な緊張でいっぱいだった。だって、他でもない一馬の彼女さんの話だよ?嫌がらせですか…!? 目の前には英士が座ってるし、それはもう、態度に出さないように必死だったんだから! あたしの必死な努力が報われたのか、その日は英士に何か言われることはなかった。 ――それなのに、神様!そんなにあたしを苛めたいんですか?(嫌な趣味してますね……!) 「ちょっと、随分なんじゃない?」 「……。こんにちは」 「こんにちは」 何気なく立ち寄ったコンビニで、まさか英士と遭遇するなんて思わなかった。 その姿を発見した瞬間に回れ右をしたんだけど、見逃してくれるほど二人きりの時の英士は甘くない。 「…なんでこんな所にいるの?」 「ちょっと一馬に用事」 「結人は?」 「今日は一緒じゃないよ。そもそもいつも一緒に行動してるわけじゃないから」 「あーうん、そうだよね」 気まずい。物凄く、気まずい。 英士があたしに話しかける=他には誰もいないっていう公式が成り立ってるのは知ってるけど、 でも出来れば二人きりだという事実に気づきたくなかったわけで というか、否定したかったの。だって二人きりの時の英士は、物凄く、こわい。 「ねぇ、そんなあからさまに不安そうな顔されると逆に何かしてやりたくなるんだけど」 鬼ですかこの人は!(そうですか、そーですね!) 思わず脳内でお昼の番組の光景がちらつく。何なんだ。何でそんなこと言うの? 英士があたしのこと嫌いだって言うのはわかってるけど、嫌いなら関わらなきゃ良いのに。 「言いたいことがあるなら黙ってないでちゃんと言いなよ」 顔に出したつもりはなかったのに、英士はあたしの心を簡単に読んでしまう。 思えばいつだってそうだ。さっきだって確かに英士を避けようとはしたけど、不安な気持ちを顔に出したつもりはないのに。 (勘だけじゃなくて、嘘だって得意な方だ)(だってみんな気づかない) 「――…英士はあたしのことが嫌いなんでしょ」 「嫌いだよ」 「じゃぁ何で話しかけるの?一馬と結人がいる時は話しかけたりしないくせに」 「が嫌いだから」 「そんなの理由になってない。わかんないよ」 「…はそれを知ってどうするの」 「え、あ…たしは……」 どうするんだろう。理由を知って、あたしはどうしたいの? ぐるぐる、ぐるぐる、回る思考と共に泳がせた視線は、やっぱり英士に捉まった。 「べ、別になんだって良いでしょ!」 「それこそ理由になってないよ」 英士はあたしから視線を外して、小さく溜息を吐いた。 (何であたしが呆れられないといけないの?)(あたしが悪いの?) |